政府の地震調査委員会は24日、将来の発生が懸念される南海トラフ地震で西日本から東日本の各地を襲う津波の確率を公表した。太平洋側や瀬戸内の352市区町村のそれぞれについて、3~10メートル以上の津波が押し寄せる確率を「30年以内に26%以上」などと計算した。これまでは最も高い津波への警戒を呼びかけており、高さごとに地域別の確率を示すのは初めて。行政や企業、個人の備えを強く促す狙いだ。
津波の高さを「3メートル以上」「5メートル以上」「10メートル以上」の3つに分け、30年以内に押し寄せる確率を求めた。確率は「6%未満」「6%以上26%未満」「26%以上」の3段階で示した。
全体の2割にあたる約70の自治体で、3メートル以上の津波に見舞われる確率が26%以上だった。静岡県御前崎市や愛知県豊橋市などが入る。30年以内に交通事故でけがをする確率が15%とされ、それよりも高い確率だ。
このうち5メートル以上が26%以上の確率となった自治体は、高知市や三重県大紀町など約30。10メートル以上でも6%以上26%未満の確率が高知県黒潮町や静岡県沼津市など約20あった。
南海トラフ地震については、マグニチュード(M)9.1クラスの最大級の地震で最大約34メートルの津波がくると内閣府が2012年に推計している。今回は最大級の地震は除き、30年以内に70~80%の確率で起きるとされるM8~9クラスを想定した。
最大想定だけでなく、3メートル以上など高い確率で起こるリスクを明らかにした点で、これまでの津波評価とは異なる。地震調査委の平田直委員長は「最大想定への対処で自治体が苦慮するケースもみられる。できることから着実に備えをしてほしい」と話す。
津波の高さや確率といった「現実的な想定」を示し、最大想定の津波への備えが追いつかない自治体にまずは最低限の対策から始めるよう促す狙いがあるとみられる。
対象となる津波は最大想定よりも低いが、発生すれば大きな被害をもたらす。3メートル以上の津波では木造家屋の全壊や流出が相次ぎ、5~6メートルの高さを超えると被害が急増する。防潮堤の整備や避難体制の構築などで各自治体の迅速な対応を迫る。
最大想定を踏まえた防災対策に比べ、今回の評価は現実の危機を強調している。実際に南海トラフの震源域で起きると推定されている全てのタイプの津波を考慮した。検討した地震は79通り、津波は35万通りに上る。50メートル間隔で全国の海岸線に到達する津波の高さを求め、各地に達する津波の高さと確率を一覧で示した。
従来の津波評価は、被害の大きい10通り程度の地震に絞って計算した。津波の高さは高知県や三重県などを中心に最大で20~30メートルに達すると試算され、この想定に対処する対策が各自治体に求められてきた。最大の被害を明らかにするのが目的で、確率は計算されていなかった。
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2020-01-24 08:00:00Z
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