夢枕 獏「蠱毒の城――月の船――」
前回までのあらすじ
遣唐使の井真成は、閉ざされた城内での殺し合いに参加する。そこで椿麗、毛天籟、夢蘭、黄雲雕の仲間を得、立ちはだかる敵・銭惟演を打ち破る。殺し合いの後、杜子春と呼ばれる青年が現れ、真成ら生き残った十二名を含む四十九名で旅に出ると告げる。真成は、城内でかつて人間を贄に使った蠱毒という呪法が行われたこと、自分たちの殺し合いもまた蠱毒であったことを知る。旅への出発前夜、皆が寝静まった中で、真成は椿麗に声を掛けられる。
十八章 不死王
古風(三) 李白
秦皇掃六合 虎視何雄哉
揮剣決浮雲 諸侯尽西来
明断自天啓 大略駕羣才
収兵鋳金人 函谷正東開
銘功会稽嶺 騁望瑯琊台
刑徒七十万 起土驪山隈
尚採不死薬 茫然使心哀
連弩射海魚 長鯨正崔嵬
額鼻象五嶽 揚波噴雲雷
鬐鬣蔽青天 何由観蓬萊
徐市載秦女 楼船幾時廻
但見三泉下 金棺葬寒灰
古風(その三) 李白
秦皇
虎視 何ぞ雄なるや
剣を
諸侯
明断 天より
大略
兵を収めて 金人を
函谷 正に東に開く
功を銘す
望を
刑徒七十万
土を起す
尚お不死の薬を採り
茫然 心をして哀しましむ
連弩 海魚を射り
長鯨 正に崔
額鼻は五嶽に
波を揚げて雲雷を
何に由ってか蓬萊を
徐市 秦女を載せ
楼船 幾時か
但だ見る 三泉の下
金棺 寒灰を葬るを
(一)
不思議なことに──というよりは、あたりまえのことのように、古来、王は不死を求めてきた。
権力、富、名声、土地、美女──この地上のあらゆるものを手にしたあげくに、王は、この世のものならぬものを求めるようになる。それが、不死、あるいは不老不死である。絶対に死なぬこと、そして、老いぬこと。
もっとも、これは、王ならずとも、人として生まれた者の多くが求めるものである。
しかし、この不老不死を実際に手に入れた者は、この地上に独りも存在しないのである。どのような王も、求めてこれを手に入れることができなかった。
古代、
全てのものは移ろいゆく──
これが、仏教の真理である。
仏教は、後に様々の宗派に分かれ、多くの経典が書かれて、ゴータマ・シッダールタが語った言葉とは大きくかけ離れた教えを
つまり、人は老いる。
病を得る。
そして、死ぬ。
そういう生き物であり、こればかりは、いかに権力を得ようが、金を持っていようが、
しかし、なお、歴代の王たちは、それを承知で、その権力と富の限りを尽くして、不死を手に入れようとしたのである。
ここに、周王朝五代の王、
穆王は、後に生まれた
ただ、梅林を散策してきた人間の衣に、梅の香が
それは、穆王が、数年をかけて、九万里の旅をし、その旅の中で
西王母と言えば、
その理由は、定かではない。
穆王は、前九七六年から前九二二年にかけて在位した王であるが、その穆王の十三年から十七年にかけて、この旅を行っている。
この旅については、『
人が不死を得ようとした時、
それは、仙人となることである。
▶後編につづく
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April 14, 2020 at 05:10AM
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遣唐使・井真成が、生死を賭けた試練に挑む! 真成に託された役目とは果たして――。夢枕獏「蠱毒の城――月の船――」#88〈前編〉 | 夢枕 獏「蠱毒の城――月の船――」 | 「連載(本・小説)」 - カドブン
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