5月初め、中国の宅配便の荷物から約160匹の犬猫が発見された。ビニールで密閉された箱に詰め込まれて多くが衰弱し、すでに死んでいた動物もいた。これらは、中国の若者の間で空前のブームを生んでいる、あるビジネスモデルの商品だった。売った業者と配送業者は非難されてしかるべきだが、買った消費者も「動物虐待」の片棒をかついだと言える。背景に何があったのか。 ■排泄防止でエサ与えられず 事件は四川省成都市の動物保護団体のSNSアカウントによって告発された。投稿画像には、大型トラックの荷台に積み重ねられた黒いプラスチックケースや、そのケースにすし詰めにされた犬、猫が写っている。
続けて投稿された動画を再生すると、犬と猫のけたたましい鳴き声が響き渡る。動物保護団体によると、動物を入れたケースは送り状を貼った布袋で封をされ、宅配便の荷物として輸送される途中だった。輸送中の排泄を防ぐため、ペットは丸1日以上エサを与えられていない様子だったという。約160匹の犬猫は、中国で大流行している「ブラインドボックス」形式で、9.9元(約168円)で売られた商品だった。 ブラインドボックスは、日本の「福袋」にヒントを得た販売手法で、中身は開けてのお楽しみだ。2010年代後半に現地の雑貨チェーン「POPMART」がミニフィギュアの販売にこの手法を取り入れて大ヒットし、ここ数年で各業界に広がった。
POPMARTが公表している資料によると、同社のブラインドボックス購入者の75%が女性で、32%が20代前半のいわゆる「Z世代」だ。また、月収8000~2万元(約13万5000円~34万円)の高所得ユーザーが9割を占める。商品の販売額は2017年に9140万元(約15億円)だったのが、2019年には13億5920万元(約232億円)へと増大した。 また、中国のMob研究院が発表した「2020ブラインドボックス経済洞察報告」では、ブラインドボックス市場は2020年に100億元(約1700億円)に達し、2024年には300億元(約5000億円)に拡大すると予測している。
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