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Thursday, October 8, 2020

携帯料金値下げ、一般ユーザーの要望は? 武田総務大臣との意見交換会で見えたこと - ITmedia

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 10月8日、武田良太総務大臣と携帯電話利用者の意見交換会が総務省で開催された。

 意見交換会は、安くて分かりやすく、納得感のある料金やサービスを実現すべく、今後の政策立案に役立てることを目的としている。

携帯値下げ 意見交換会に参加した消費者団体の代表者

 菅義偉総理大臣は、かねて携帯キャリアに対して料金値下げの提言を続けており、武田氏も携帯料金は「見直す必要がある」とのスタンス。既に武田氏はキャリアとも意見交換をしたそうで、今回は一般ユーザーの声を拾うべく、消費者団体から5人の代表者が参加した。

 参加者は以下の通り。

  • 赤石千衣子(しんぐるまざあず・ふぉーらむ 理事長)
  • 木村たま代(主婦連合会 事務局長)
  • 近藤則子(老テク研究会 事務局長)
  • 新屋康夫(全国消費生活相談員協会 北陸支部長)
  • 湯田健一郎(クラウドソーシング協会 事務局長)

 武田氏は冒頭で「携帯電話は、日々、生活や仕事の中で欠かせない必需品になっているが、料金や使い勝手の面でさまざまな課題がある。国民にとって安く、分かりやすく、納得感のある料金やサービスの実現に向けて、私自身が先頭に立って取り組んでいきたい。これまでに、携帯事業者とは意見交換をさせていただいた。本日はユーザーの立場として皆さまご自身の考え、また皆さまが団体のさまざまな方々と触れてお感じになっていることを率直にお聞かせいただきたい」とあいさつした。

携帯値下げ 冒頭であいさつをする武田総務大臣

 報道陣は、冒頭の武田氏のあいさつまでは傍聴して撮影もできたが、以降は非公開。会合は17時20分に始まり、約50分後の18時10分頃に終了した。その後、総合通信基盤局 電気通信事業部 料金サービス課長の川野真稔氏が、会合の内容を説明した。ここで挙がった意見から、一般ユーザーが携帯電話に対して抱いている問題点を整理したい。

使うデータ量が増え、すぐに上限に達してしまう

 新型コロナウイルスの影響でオンライン会議をする機会が増えたが、その際にモバイルデータ通信を活用しているため、すぐに容量の上限に達してしまう人が増えているようだ。「Zoomを1時間使うと、0.6GB消費してしまうので、通信料は負担になっている」(しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石氏)。

 また、最近は動画コンテンツが増えており、自動で動画が再生されるケースもあるため、「知らない間に容量を食ってしまい、あっという間に上限まで行ってしまう」(主婦連合会の木村氏)という。「分かっていれば、Wi-Fiが近くにないときは見ないようにする、動画を止めるといったことができるが、知らないと、一気に料金が高くなってしまう。やはり安くしてほしいという要望がある」

 クラウドソーシング協会の湯田氏によると、フリーランスのユーザーで、オンライン会議によって通信料がかさむ人が増えているという。「月初にZoomで会議をして、容量が上限に達してしまうと、会議ができなくなる。公衆Wi-Fiはセキュリティの面で厳しく、自分のスマートフォンでやらざるを(通信せざるを)得ない。大容量プランが安くなった方がいい」

 そもそも、自分の利用実態を把握していない人が多く、まずは利用実態の確認方法や、それをベースにしたプランの選び方を伝えていく必要がありそうだ。

料金体系が分かりにくく家計を管理しづらい

 「最初は安いと思って入ったけど、キャンペーンが終了すると高くなる。家計管理が難しい契約がけっこうある」(赤石氏)というように、時期によって料金が変動することや、条件付きでの割引を問題視する声も多かったようだ。

携帯値下げ キャリアが紹介している料金プランは、割引適用後の価格が前面に出ており、割引前の価格が分かりにくい

 「料金プランが安く見えても、アプリの利用、長期利用、自分がどういうプランに入っているかが分かりにくい。消費者にとって分かりやすい料金体系にしてほしい」(木村氏)。「アプリの利用」とは、アプリへの課金が携帯キャリアへの支払いとは別で発生していることを指しているものと思われるが、スマートフォンでキャリア以外の支払いが増えたことで、結局トータルでいくら支払っているのかが見えにくくなったことも問題視しているようだ。

 「高齢者の中には、ショップで説明が要らないという人はいるが、料金の部分の説明はぜひしてほしい」(全国消費生活相談員協会の新屋氏)という要望も挙がった。

MVNOは音声通話が高い

 MVNOが既に安価な料金プランを提供していることから、そちらへ移行するという選択肢もあるが、「どうやって入っていいか分からず、ハードルが高いという注文」(赤石氏)があるとのこと。

 また、「MVNOが安いといわれるけど、音声通話が高い」という意見も。確かに日本通信が音声定額サービスを始めてはいるが、ほとんどのMVNOが通話については従量課金を採用し、プレフィックスサービスを利用することで通話料を半額にする程度にとどまっている。「MVNOが安いといわれるけど、音声通話が高い。高齢者は電話で話す時間が長いので、必ずしも格安ではない」(老テク研究会の近藤氏)

 VoIPアプリを使えば通話料は発生しないが、「使い方が分からない」(木村氏)というユーザーがいまだに多いのが現状だ。

 総務省側が「格安スマホやサブブランドへの乗り換えは、うまくやっているのか」と質問したところ、「うまくできる人はWi-Fiとあわせて使いこなしているが、リテラシーが低い人だとなかなか厳しい。MVNOにしたけど戻したいという人もいる」とのこと。「戻したい」の理由までは分からなかったが、「自分に合ったプランがなかった」「リアル店舗がないので相談しづらくなった」といった部分が大きいのだろうか。

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安くても品質が低下したら困る

 総務省が発表した内外価格調査では、日本の携帯料金は諸外国と比べて高いことが指摘されているが、英国のOpensignalが実施した世界主要各国の通信品質調査では、日本が上位にランクインしているという結果もある。ただ、こうした情報は一般ユーザーには届いておらず、「海外との比較は正直、聞かれてもよく分からない」(木村氏)という状況だ。

 「安いからといって品質が低下しても困る。品質と料金のバランスをきちんと実現してほしい」という悩ましい意見も。MVNOへの乗り換えがなかなか進まないのも、このあたりが大きな要因になっているのかもしれない。

携帯値下げ 英Opensignalの調査によると、日本の4G接続率は主要6ヵ国の中でトップ、平均速度は2位と高い水準にあるが、こうした状況を把握している一般ユーザーがどれだけいるのだろうか

サポートはやはり重要

 近藤氏は、「高齢者がオンラインでスマートフォンの購入手続きができない例がある」ことも問題点に挙げる。高齢者向けのスマホ教室は「間違いなく使われる」という声も多く挙がったそうだ。「データのバックアップと言われても、バックアップって何ですか? という所から始まる」ため、やはりショップをはじめとする手厚いサポートへの期待も大きいことがうかがえる。

どのぐらい安くなればいいのか

 参加した5人から、具体的に「何割下げてほしいという要望はなかった」そうだが、携帯料金が家計に占める割合は大きくなっていることから、値下げ自体を歓迎する声は大きいようだ。

 「低所得者の場合、家族それぞれがスマホを1台ずつ持っていると1万円を超える。さらに、支払いが延滞すると、信用情報にも引っ掛かり、その後のローンにも響く。携帯を手放すような方もいらっしゃるけど、携帯を手放してしまうと、職探しもできなくなってしまう」(赤石氏)

「分かりにくさの改善」と「値下げ」を並行して進める?

 武田氏は、会の最後に「利用者の(料金プランの)中身が分かりにくいという話が印象的だった」と話したという。「(料金プランが)自分に合っているかいないか、そこをしっかりと消費者が理解して購入できるやり方を整えたい」とした。

 「分かりにくい料金体系」は値下げとは別の話なので、割引前の料金をしっかり提示する、期間限定のキャンペーンをやめる、といったことで対応はできるだろう。一方、品質やサポートを重視している声も多かった印象だが、ここは値下げとは相反する部分。サポートや通信サービスの品質を落とさずに値下げを……となると、キャリアはますます難しいかじ取りを迫られているといえる。

 なお、意見交換会について、第2回目以降を開催する予定は現時点ではない。会合で出た意見は高齢者や女性のものが多かった印象だが、もう少し幅広い層にヒアリングしないのか。川野氏は「国民の全員に聞くことはできないので、いろいろな利用者に直接関わる活動をしている団体の方、という視点で(5人を)選んだ。選考過程については控えたい」とコメント。

 「競争ルールの検証、ワーキンググループ、有識者会合は総務省として開催している。(競争ルールの検証に関する)報告書(案)への意見募集を9月に開始し、今日(10月8日)が締め切りなので、出た意見をとりまとめていく」(川野氏)

 今後はパブリックコメントや有識者会合などを通じて、具体的な方向性を定めていくことになりそうだ。

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