2018年の北海道胆振東部地震では、道内ほぼ全域の295万戸が最長2日間にわたって停電する大規模な全域停電(ブラックアウト)が起きた。国内初となるブラックアウトの一因は、北海道電力が石炭火力の苫東厚真(とまとうあつま)発電所(厚真町)に発電量を集中させていたことだ。
北電は再発防止に向け、泊原子力発電所(泊村)の再稼働による電源構成の分散化を急ぐ。
地震が発生した18年9月時点で、苫東厚真発電所は道内の電力需要(308万キロワット)の48%を担っていた。その苫東厚真が、地震で損傷するなどして止まった。
停止直後、北電は北海道と本州を結ぶ送電網「北本(きたほん)連系線」を通して電力の緊急融通を受けたが、変動に対応しきれなかった。需給バランスが大きく崩れたことで、道内の別の発電所も連鎖停止を余儀なくされ、北電の送電網全体が機能しなくなった。復旧には45時間かかった。
地震後の20年度でも、北電の年間発電量に占める石炭火力の割合は55%と、全国平均(32%)を大きく上回る。石炭火力への依存がここまで進んだのは、東日本大震災での原発事故が影響している。
東日本大震災の前は原発が44%で、石炭火力は31%だった。だが福島第一原発の事故に伴う泊原発の運転停止で、石炭火力の電源構成を大きくせざるを得なくなった。
なかでも、コストを安く抑えられる海外炭を使う苫東厚真に過度に頼る構造となっていた。胆振東部地震ではその厚真町で大きな揺れを観測し、苫東厚真も被害を受けた。北電は「ブラックアウトは泊原発が停止していた特異な状況下で、複合的要因が重なって起きた」と説明する。
石炭火力依存からの脱却でカギを握るのが、泊原発の再稼働だ。再稼働の最大の難関だった敷地内断層が活断層かどうかの判断について、原子力規制委員会は今年7月、北電の「活断層ではない」とする主張を認めた。審査は8年間におよび膠着(こうちゃく)していたが、これで再稼働に向けた手続きが進むことになった。再稼働すれば電源構成は一定程度の分散化が見込まれ、ブラックアウトの再発リスクは減る。
ただ、再稼働をめぐっては、原発そのものの安全性も問われる。原発頼みにならない再発リスクの軽減は欠かせない。そのひとつが本州と道内を結ぶ送電網の増強だ。
北電の関連会社は5月、送電網の増強計画を発表。本州とを結ぶ二つの送電網のうち一つ(30万キロワット)の容量を30万キロワット増やし、60万キロワットにする。送電能力は3割増の計120万キロワットとなる。総工費は479億円。23年春ごろに工事に着工し、28年3月の運転開始を予定している。
北電の藤井裕社長は「ブラックアウトの経験を風化させることなく繰り返し訓練も行うなど、安定供給に向けて気を緩めずしっかり取り組んでいきたい」と話す。(佐藤亜季)
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