【北京=三塚聖平】中国各地で電力不足が深刻化して停電が相次いでいる。習近平国家主席が掲げた地球温暖化対策目標の達成に向け、火力発電所の稼働抑制の動きが広がったことが響いたと指摘される。影響は中国本土の約3分の2に相当する地域に広がり、中国経済の先行きへの不透明感が増している。
中国メディアによると、20省・自治区・直轄市で電力不足が起きている。東北部の吉林省吉林市では、来年3月まで停電や断水が常態化すると表明。東部の江蘇省では、1000社超が工場を2日間稼働した後に2日間停止することを余儀なくされているという。
電力不足は、火力発電用の燃料である石炭の価格高騰や供給不足が直撃した。新型コロナウイルス禍からの製造業の回復が進み、電力消費量が伸びたことも状況を悪化させている。
加えて、地方政府がエネルギー消費量を減らすことに躍起になっていたことが響いたと指摘される。習氏は昨年9月、2060年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにするとの目標を表明。中国政府はこの目標達成へ、地方政府に排出削減につながる措置を求めている。これを受け、二酸化炭素を多く排出する石炭を使う火力発電所や、工場の稼働率を下げる動きが出ていたという。
電力不足は既に「世界の工場」を揺るがしている。米アップルや米電気自動車(EV)大手テスラの中国の一部供給業者は、電力不足で工場の稼働停止に追い込まれた。米ブルームバーグ通信は、巨額負債で経営危機に陥っている中国不動産大手、中国恒大(こうだい)集団の問題を挙げて「中国の電力危機は、恒大に続く経済的な打撃だ」と強調する。
中国当局も危機感を強めている。国有送電会社、国家電網は27日、電力不足を受けて「全力を尽くして電力供給を守る戦いに臨む」と強調し、省をまたぐ電力融通などの対策を行うと発表した。
大きな打撃を受けている吉林省幹部は同日、地元の電力会社に対して火力発電用の燃料である石炭の確保に全力を尽くすよう指示。ロシアやモンゴル、インドネシアからの輸入を進める考えを示した。
日本企業にも影響中国の深刻な電力不足は、現地工場で大量の電力を使用する日本企業にも影響をもたらしている。日本貿易振興機構(ジェトロ)広州事務所などが緊急調査を行ったところ、自動車メーカーなど日系製造業も集積する南部の広東省では、180社以上の日系企業から電力規制の影響を受けているとの回答があった。同事務所の清水顕司所長は「実際に影響を受けている企業はもっと多いと思われる」と指摘する。
同省広州市では22~27日、電力使用量が多い朝から深夜の時間帯の生産用電気の供給停止の通知や節電要請があり、ブレーキ大手の曙ブレーキは工場の稼働を深夜から朝の時間帯にずらした。当初、土曜の25日は工場を稼働し、日曜の26日は休みとする予定だったが、変更を余儀なくされた。
金属加工機械大手のアマダも同じく深夜から朝の時間帯に工場を稼働。節電対策として事務所ではエアコンの調整を実施し、作業現場でも照明を極力切るなどしているが、安全作業に徹するよう努めているという。「予想がつかないので、柔軟に対応していく」(広報)としている。
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