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Saturday, October 30, 2021

アングル:再エネ移行に背向ける米石油大手、投資家も増産支持 - ロイター (Reuters Japan)

ikanberenangkali.blogspot.com

[ヒューストン/ボストン 27日 ロイター] - 欧州の石油大手が再生可能エネルギーへの移行を図っているのとは対照的に、米石油大手はますます生産を増やしている。主要な機関投資家も米石油企業が風力や太陽光発電に投資することを望んでおらず、この姿勢を支持しているのが実情だ。

欧州の石油大手が再生可能エネルギーへの移行を図っているのとは対照的に、米石油大手はますます生産を増やしている。写真は2014年11月、米カリフォルニア州ベーカーズフィールドで撮影した石油掘削装置(2021年 ロイター/Jonathan Alcorn)

総額約7兆ドルを運用する米資産運用会社10社余りにロイターが取材したところ、大半は、石油企業が「勝手知った」石油事業そのものでリターンを生み出し、株主に利益をもたらしてくれる方がよい、と答えた。株主自身が、受け取った利益を再生可能エネルギーに投資すればよいとの考え方だ。

今年は石油と天然ガスの価格が跳ね上がり、米石油大手は欧州の競合よりも総じて高いリターン、株価収益率(PER)、配当を実現。株主の支持はさらに強固になった。

アダムズ・ファンドを率いるマーク・ストークル氏は「結局のところ、素晴らしい約束をしているからという理由でその企業に投資するわけではない」と語る。同ファンドは現在、米石油企業への投資を優先し、欧州石油大手の株は保有していない。

アメリカン・センチュリー・バリュー・ファンドのマイケル・リス氏は、欧州よりも米国の石油大手に多く投資している理由の一つとして、石油需要がまだ強い今、再生可能エネルギーや代替的な燃料に欧州大手ほど資本の多くを費やしていないことを挙げた。新たなエネルギー源の採用に関しては「(米企業の)ペースの方が現実的だと思う」と話す。

リターンとエネルギー移行スピードのどちらを重視するかで米欧の戦略は分かれている。その背景にあるのは投資家と政府による圧力の違いだ。このことは、31日から始まる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の主要課題である、世界的な化石燃料削減計画を取りまとめることの難しさを物語ってもいる。

<木を植えるのは株主>

シェブロン、エクソンモービル、コノコフィリップスといった米石油大手は、風力・太陽光発電に直接関わることを拒否し、欧州大手に比べてエネルギー移行計画への支出を抑えている。大半は石油生産を増やす見通しだ。

米企業も気候変動への懸念は表明している。石油1バレルの生産過程で排出される温室効果ガスを削減すると約束しているほか、枯渇した油田に二酸化炭素(CO2)を埋める技術の実用化や、水素や藻類由来のバイオ燃料といったクリーン燃料の開発にも取り組んでいる。

しかしシェブロンのマイケル・ワース最高経営責任者(CEO)が先月記者団に語った通り、米企業は株主に利益をもたらすことを優先し、「木を植えるのは株主に任せる」姿勢だ。

「われわれも欧州企業がやっていることをすべきだ、との意見もある。しかし私が話を聞いた限り、それは大多数の株主の考えではないようだ」とワース氏は述べた。

欧州は天然ガスと電力の価格が急騰するというエネルギー危機に見舞われた。エクソンモービルのシニア・バイスプレジデント、ニール・A・チャップマン氏は今月、危機の一因は化石燃料への投資不足にあると語った。 

米国と欧州では、政府が石油企業に望む温室効果ガス排出量削減の方法が異なる。米議会はカーボン・キャプチャー(CO2回収)とCO2貯留への投資拡大を求めているのに対し、ドイツと英国の政府は温室効果ガス排出量の大幅削減を義務付ける法律を通した。

資産運用会社バンエックのショーン・レイノルズ氏は、石油価格が最近上昇したことによって、米石油大手の戦略の正しさと、化石燃料需要を減らさないままエネルギー移行を進めることの危険性が示されたと指摘する。

「エネルギー移行は一夜にして成らないという現実に、企業は徐々に目覚めつつある。利ざやの薄い再生可能エネルギーを拡大している石油企業は、石油と天然ガスによる利益を逃すだろう」

<グリーン投資の限界>

米石油企業への資金流入は、気候変動を意識するファンドが増えている流れに逆行するものだ。化石燃料関連株への投資がゼロあるいは控えめな「持続可能」ファンドとモーニングスターが位置づける米株式ファンドは、1─9月に257億ドルが流入したが、表立って持続可能性に注目していないファンドの半分強の規模となった。

石油・天然ガス株に投資する上場投資信託(ETF)、「XOP ETF」の年初から26日午後までのトータルリターンが92%に達したのに対し、代表的な環境、社会、統治(ESG)ファンドである「バンガードFTSEソーシャル・インデックス・ファンド」は22%だった。S&P500種総合株価指数の同期間のトータルリターンは23%となっている。

現在、石油大手企業株を最も多く保有しているのはパッシブ運用を行うファンドだ。こうしたファンドは概して、気候変動対応への不満を示すために石油株を売ることはできず、企業との対話や議決権行使によって懸念を伝えるしかない。

<粘り勝ち>

ハーバード大学やロックフェラー・ブラザーズなどの基金や財団は、化石燃料関連株への投資を減らすノルウェーの政府系ファンド(SWF)主導の動きに加わった。最近の調査によると、総額39兆2000億ドルを運用する機関が何らかの形で化石燃料投資の削減を約束している。

しかしロイターが取材した機関投資家は、これに追随する方針を示さなかった。フェデレーテッド・ハーミーズ傘下のEOSのブルース・ダグイド氏は、投資を続けながら、企業に気候変動対応の説明を迫る方が良いと話した。

リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメントのシニア持続可能性アナリスト、イアンキュ・ダラムス氏によると、世界が新たなエネルギー源に移行する中でも、自社は粘り勝ちできると踏んでいる石油企業幹部があまりに多く、大幅な生産削減を望む者はほとんどいない。

ダラムス氏は「われわれが話をする石油企業はどこも、『最後まで立ち続けているのはわが社になるだろう』と言う」と語った。

(Sabrina Valle記者 Ross Kerber記者)

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