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Thursday, September 10, 2020

アメリカ同時多発テロはなぜ起きたのか。“史上最悪”のテロ事件を振り返る【画像】 - ハフポスト日本版

ikanberenangkali.blogspot.com

Spencer Platt via Getty Images

ハイジャックされた航空機が衝突し、炎上する世界貿易センタービル(ニューヨーク、2001年9月11日)

民間機4機が国際テロ組織にハイジャックされ、日本人24人を含む2977人が犠牲になった、アメリカ同時多発テロ(9.11事件)から19年を迎えた。

航空機がビルに突入する瞬間や、ビルが白煙を巻き上げながら崩れ落ちていく映像がリアルタイムで放送され、その惨劇は世界を震撼させた。

多数の民間人の命を奪う「対テロ戦争」の発端にもなった“史上最悪”のテロ事件は、なぜ起こったのか。事件現場はその後、どう変わったのか。写真と資料で振り返る。

2001年9月11日午前8時46分、ボストン発ロサンゼルス行きのアメリカン航空11便が、ニューヨークの世界貿易センタービル北棟に衝突した。

その17分後、乗客乗員計65人を乗せたユナイテッド航空175便が、世界貿易センタービルの南棟に突入。午前9時37分には、バージニア州の国防総省(通称ペンタゴン)に、アメリカン航空77便が激突した。

午前10時3分、ペンシルベニア州の平野に最後の1機のユナイテッド航空93便が墜落した。

Jeff Christensen / reuters

崩れ落ちる世界貿易センタービル(2001年9月11日)

Larry Downing / reuters

航空機が衝突したペンタゴン(2001年9月11日)

Ron Agam via Getty Images

世界貿易センタービルの崩壊現場で活動する消防隊員ら(2001年9月11日)

DAVID MAXWELL via Getty Images

ペンシルベニア州シャンクスビルにあるユナイテッド航空93便の墜落現場。44人の乗客・乗員は全員死亡した(2001年9月12日)

各紙縮刷版より(撮影:國崎万智)

アメリカ同時多発テロ事件を報じる全国紙の2001年9月12日の朝刊。「まさに戦場」「世界震かん」などの見出しが並ぶ

2機が衝突した世界貿易センタービルは、11日午前10時〜10時半ごろにかけて相次いで崩れ落ちた。

一連のテロ事件の犠牲者数は2977人に上った。その中には、建物内で生存者の救助活動にあたっていた警察官や消防隊員も含まれている。

ハイジャックした19人の実行犯たちは、国際テロ組織「アルカイダ」のメンバー。航空機4機に4〜5人ずつ乗り込み、全員死亡した。

ペンシルベニア州の平原に墜落したユナイテッド航空93便は、乗客と乗員たちがハイジャック犯に抵抗したため、標的であるワシントンD.C.のホワイトハウス(アメリカ合衆国議会議事堂とする説もある)に到達しなかった。

時事通信社

世界貿易センタービルの崩壊現場跡(2002年4月2日)

Kai Pfaffenbach / reuters

現場近くの追悼広場で、犠牲者の写真を眺める人(ニューヨーク、2001年9月18日)

JOHN MOTTERN via Getty Images

情報を求めて病院近くに貼り出された行方不明者の写真(ニューヨーク、2001年9月12日)

Evan Agostini via Getty Images

ユニオンスクエアで行われた追悼のキャンドル集会(2001年9月13日)

■国際テロ組織「アルカイダ」とは

9.11を引き起こしたアルカイダは、1989年に誕生した国際テロ集団。どんな組織なのか?

ソ連軍は1979年、アフガニスタンに侵攻する。ソ連軍を駆逐するための「ジハード」(聖戦)に参加するため、アラブ諸国の若いムスリム(イスラム教徒)を中心とする義勇兵たちが、アフガニスタンや隣国パキスタンに向かった。

1989年にソ連軍がアフガンから撤退すると、対ソ連で戦った抵抗勢力の間で内乱が発生した。こうした中、一部のアラブ人義勇兵たちによって次のジハードを戦うための組織アルカイダが結成された。

Reuters Photographer / reuters

9.11事件当時、国際テロ組織「アルカイダ」の最高指導者だったオサマ・ビン・ラディン

アルカイダの幹部らにとって、戦場を失った義勇兵たちの処遇は喫緊の課題だった。1990年の湾岸危機で、米軍がメッカとメディナというイスラム教の2大聖地があるサウジアラビアに駐留したことは「異教徒の軍隊がイスラムの聖地を占領している」とみなされ、攻撃の対象とされた。

アルカイダの論理はエスカレートし、サウジアラビア駐留軍だけでなく、全てのアメリカ人を「標的」とするようになった。

アルカイダの最高指導者のオサマ・ビン・ラディンは、2011年5月2日、パキスタンのアボッタバードでアメリカ軍特殊部隊に殺害された。

■泥沼化した「対テロ戦争」

アフガニスタンを支配していたタリバン政権は、テロを計画したアルカイダ指導部の引き渡しを拒んだ。そのため2001年10月、アメリカはイギリスなどとともにアフガニスタン攻撃を開始。タリバン政権を壊滅させた。以降、アメリカや同盟国による「対テロ戦争」が激化していくことになる。

ブッシュ大統領は2002年1月の一般教書演説で、テロを支援し、大量破壊兵器の獲得を目指す国家のことを「悪の枢軸」と呼び、北朝鮮、イラン、イラクの3国を名指しで非難した。

Reuters Photographer / reuters

イラクに対する武力行使の権限を大統領に与える決議案が、アメリカ上院で可決されたことを報告するブッシュ大統領(2002年10月)

1990年代後半から、共和党内部で活発に活動していた「ネオコン」と呼ばれる新保守主義者たちは、特に9.11事件以降、積極的にイラクのフセイン政権打倒を主張していた。ネオコンの特徴の一つは、自由主義や民主主義といったアメリカの価値観を、軍事力や経済力を行使したとしても他国に広める、という思想だ。

アメリカは開戦理由として、イラクが化学兵器や核兵器などの大量破壊兵器の開発を進めて保有していることや、アルカイダとつながっていることを挙げた。イラクはいずれの疑惑も否定し続けた。

■「大量破壊兵器」は見つからなかった

イギリスや日本など一部の国を除き、イラクへの軍事攻撃に対する慎重論が上がっていた。しかし、アメリカは2003年3月20日、イラクへの武力攻撃を開始(イラク戦争)。アメリカ、イギリス、オーストラリア、ポーランドの4カ国でつくる有志連合軍は、イラク各地で大規模な空爆を行った。

PATRICK BAZ via Getty Images

イラクの首都バグダッド市内中心部が米軍に制圧され、引き倒されるフセイン大統領の像(2003年4月9日)

当時日本の首相だった小泉純一郎氏は、攻撃開始直後に談話を発表。「我が国の同盟国である米国をはじめとする国々によるこの度のイラクに対する武力行使を支持します」との立場を示した。

イラク戦争の空爆や、米占領軍に対する自爆テロなどの攻撃で、イラクでは多数の民間人が犠牲になった。

2004年10月には、イラクの大量破壊兵器の捜索を担当していたアメリカの調査団による最終報告書が議会に提出された。イラクには大量破壊兵器は存在せず、開発計画もなかったと結論づけるものだった。アメリカ兵によるイラク人への虐待や非人道的行為、性暴力といった問題も暴かれた。

イラク戦争と、戦後のイラク国内の治安悪化で、アメリカに対する憎悪はますます膨らんだ。欧米など世界各地でテロ事件を繰り広げるイスラム国(IS)の誕生へとつながっていく。

■「グラウンド・ゼロ」はいま

世界貿易センタービル跡地は、「グラウンド・ゼロ」(爆心地)と呼ばれる。

グラウンド・ゼロには、事件を伝える「9.11メモリアル博物館」が設置されたほか、犠牲者を悼む記念碑も整備された。超高層ビル「ワンワールドトレードセンター」なども建設され、2棟のタワーが崩壊した事件直後とは全く異なる表情を見せている。

毎年9月11日には、グラウンド・ゼロなど事件現場で追悼式典が行われている。9月11日夜〜翌朝まで、世界貿易センタービルの2棟に見立てた青い光のツインタワー「追悼の光」(Tribute in Light)が、ニューヨークの空を照らし出す。

POOL New / reuters

世界貿易センタービルの跡地にできた石碑には犠牲者の名前が刻まれている(2014年5月)

Drew Angerer via Getty Images

犠牲者の写真が貼られた追悼博物館(2017年6月)

ASSOCIATED PRESS

テロ事件で崩落した世界貿易センターのツインタワーに見立てた2本の青い光。犠牲者を悼む意味が込められている(ニューヨーク、2016年9月11日)

ASSOCIATED PRESS

世界貿易センタービルの跡地には、超高層ビル「ワンワールドトレードセンター」(左)などが建設された(2018年6月8日)

監修:保坂修司氏(日本エネルギー経済研究所理事・中東研究センター長)

▼参考文献

「ジハード主義」(保坂修司/岩波書店/2017)

・「9.11オフィシャル・レポート」(シド・ジェイコブソン、アーニー・コロン/イースト・プレス/2007年)

・「イラク戦争と変貌する中東世界」(保坂修司/山川出版社/2012年)

・「9.11後の現代史」(酒井啓子/講談社現代新書/2018年)

・「アフガン・対テロ戦争の研究〜タリバンはなぜ復活したのか」(多谷千香子/岩波書店/2016年)

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